インタビュー漆工

漆は自然素材、うまくいかないこともある。だからこそ、やりがいがある。

荻村 正公

OGIMURA Masahiro

家具等の大きいものから小さいものまで。
「呂色塗り」・「乾漆」技法を中心とした様々な漆器を製作しております。

インタビューに答える荻原さん

古いものでも、漆を塗り替えれば見違えるほど美しい。

どのようなものを手掛けているのでしょうか?

父の代から塗師をしておりまして、高校卒業と同時にこの世界に入りました。以来、お椀や箸、重箱などの小物から、テーブルや座卓、仏壇、棚などの大物まで手掛けています。頼まれれば、何でも塗っちゃうね。

塗り直しの修理依頼も多いですね。古いものでも、漆を塗ることによって新品のように見違えますんで、ずっと使ってもらえるように化粧できるのが漆のいいところだね。

漆塗りに使う刷毛。
乾燥中の作品

作品制作について教えてください。

展示会や、道の駅のブースに出すような一品物は、今まで培ってきた技法を盛り込んでいます。

展示会や、道の駅のブースに出すような一品物は、今まで培ってきた技法を盛り込んでいます。

例えば、箸には乾漆塗(かんしつぬり)を使用しています。漆の粉を箸先に付けることでざらつくので、食べ物が滑りにくくて、掴みやすい箸になりますね。つやが抑えられて、傷がつきにくい丈夫さが出るので、テーブルなどにも使われる技法です。

刷毛の油を落とし、漆塗りの準備をしております。

ほかには、どのような技法をされているのでしょうか?

漆を塗ってからツルツルになるように研ぐ、呂色塗(ろいろぬり)の技法を、うちでは得意としていますね。炭の細かい粒子で磨きあげることもあります。漆は、平らな面に塗るのは難しく、ごまかしは利かないもの。呂色塗りでは、平らな面も鏡面のように光沢ある仕上がりになるので、漆塗りの最高技法と言われているね。

あとは根来塗(ねごろぬり)もよくやりますね。下に黒の漆を塗って、その上に朱の漆を塗り重ねます。朱を少し透かせることで、黒を模様としてうっすらと浮かび上がらせる技法です。意図的に模様とすることもありますし、自然に表れる模様もありますので、ぜひ楽しんで見ていただきたいですね。

漆は自然素材。うまくいかないこともある。

仕事において、楽しいことや、やりがいについて教えてください。

漆は自然素材なので、いつもうまくいくわけではありませんので、塗り直しもよくあります。だから、上手く塗れたときはビックリ。楽しいね。作品として食器などを生み出すのは、いい気分転換にもなります。自分の家で使いたい食器なんかも、自分で作っちゃうね。

最近は職人さんから頼まれることも多くてね。表具屋さんからは、仕事道具の塗りを頼まれまして、仕事のやる気につながったと喜んでもらえました。ほかにも、剣道の胴を制作する職人さんからも塗りを任されていて、やりがいがありますね。

職人同士、支え合って仕事をしているものだから、最近は職人が少なくなってきて困っていることもあるけどね。職人同士の信頼関係で伝統が守られているんだよ。

漆を漉す、荻村さん。

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