漆の可能性。【 探究心 × 遊び心 】で新たな作品を生み出し続ける。
西野うるし工房
西野 孝章
NISHINO Takanori
岐阜から漆をやりたくて木曽平沢にきました。
下塗りから上塗りまで覚えて、今は上塗師として、毎日塗っています。
現在は箸屋として、主に箸の製造販売をしております。
作り手に憧れ、地元を出て木曽の地へ。
経歴について教えてください。
子どもの頃から、両親が自営農業の道具制作をする姿を見てきまして、もの作りが日常にありました。兄が木工品を加工・製造する職人となった姿を見て、私も作り手に憧れ、高校卒業後に岐阜県から木曽の地に移りました。
漆器屋での修行や、漆芸学院での勉強を経て、箸を扱う現在の工房を引き継ぐこととなりました。普段は器と箸の塗りを主に行っていますが、作品としては、いろんな漆器で表現しています。
繧繝塗はまるで、生き物のよう。
独自技法の繧繝塗(うんげんぬり)について教えてください。
「繧繝」には、ぼかすという意味があります。緑や朱、ピンク、黒などの彩りがいろんなところで混ざり合う技法です。手仕事によって表れる塗りはさまざま。さらに漆は、生産過程の温度や乾き方などによって色味が変わる、まるで生き物のような存在です。そのため、同じ柄はひとつとありません。
新しいものを作り出す努力は、ずっとしていかなくてはならない。
作品にかける思いを教えてください。
漆の塗り技法はほとんど出尽くしたと言われていますが、それじゃ面白くない。新しいものを作り出す努力は、ずっとしていかなくてはならないと考えています。1年にいくつか展覧会があるので、それに出せる品物を、と日々考えています。
後世に伝えることを意識して、伝統的な技術を新たなデザインの中で試すこともあります。器全体に塗るのではなく一部に垂らしてみたり、ぐい飲みの中にキラキラと輝く漆を塗って、酒の下で光が揺らめくようにしたりね。過去の作品がどのようにできているのか研究することで、ヒントを得ることもあります。遊び心で新たなデザインが生まれることもあるので、面白いですね。
漆器は長く使えて、土にも還る。地球にも優しい素材。
お客様へのメッセージをお願いします。
箸にもたくさんの表現が用いられます。今の時代にあったものを出したいと、日々追求しています。乾いたパウダー状の漆をかけたり、布を巻いてその上から漆を塗ったりなどの工夫で、手触りが変わったり、模様が浮かび上がるんです。木の種類や型もたくさんあるので、使い心地で選んでください。器や食べ物に合わせて箸をコーディネートするのも、気分が変わっておすすめですよ。
漆器は修理をすれば長く使えるし、土にも還る自然素材。今の時代にあっている塗料だと思います。そしてスプーンなどは一度使うと口当たりの良さにびっくりしますので、ぜひ試してみてほしいですね。