インタビュー漆工

「漆の魅力は、すぐにはうまくいかないところ。」高い壁を設定し、貪欲に作品作りに取り組む職人魂。

春野屋漆器工房

小林 広幸

KOBAYASHI Hiroyuki

漆塗の職人です。漆器の製造や販売をしたり、素材への漆塗り、塗り替えや修理なども行っております。器などは木を削って木地から製作することもあり、家具や木の風呂桶(浴槽)、住宅等の床板材など、小さなもの~大きなものも幅広く漆を塗って製作をしております。

インタビューに答える小林さん

明治時代から続く家業を受け継ぐ。

普段のお仕事についてお聞かせください。

明治時代から続く家業を継いで、塗師となって40年。漆塗りは、箸やお椀などの漆器全般から、タンスなどの家具、住宅や旅館の柱や、フローリングの大きなものも、うちは幅広く手掛けています。美術館やお寺などの現場にも漆を塗りに出向いているね。注文を受けた製品に使う板材の買い付け、図面の作成、漆塗り、さらに現場に納めるまでの一貫生産を管理することもあります。修理も多く、金継ぎや塗り直しなども行っていますね。

漆器を乾燥させている様子
工房内の様子

制作物について教えてください。

工房にある店舗や、全国で開催する個展などに並ぶ作品も制作しています。漆は自然素材だから、新しい塗り方をしたり、素材を組み合わせることで、今までとは異なる反応が見られるんだよね。長年、新しいデザインを求めて試行錯誤してきているけど、今でも漆の力には驚かされるね。製品としては、サワラやヒノキの木材から製作する、漆塗りの浴槽もおすすめですね。お好みの寸法で製作できますんで、旅館だけでなく一般住宅でも使ってもらえます。漆の力で木が長持ちするし、お手入れが簡単になるんだわ。

春野屋漆器工房 販売スペースの様子

漆器作りの魅力は、すぐにはうまくいかないところ

作品にかける思いを教えてください。

完成品のイメージや、満足する基準を ”高み” に置いて、作品づりに挑んでいます。出来上がった作品が、これまで鑑賞してきた物から湧きあがったイメージや、その時の自分の感性に、ガチッと一致した時なんて、小躍りして喜んじゃうね。逆にうまくいかなければ「もう辞めちゃおうか」なんて思うくらいに落ち込む、その繰り返しなんだわ。40年やっていてもね、まだ勉強中だし、満足できる作品なんて、すぐに出来てちゃだめ。漆の魅力は、すぐにはうまくいかないところだね。それがモチベーションにもなっています。

「もしかしたら漆が世界のスタンダードになるかもしれない」

お客様へのメッセージをお願いします。

日常生活の中で、毎日使っていただけるような製品を世に出したいと、工夫しながら作っています。漆は修理しながら長く使えるし、愛着を持ってもらえると嬉しいね。最近では、外国からも注文があってね、その地の文化に合わせたデザインもしてます。「もしかしたら漆が世界のスタンダードになるかもしれない」と思うと面白いよね。古くから伝わるものだけんど、まだまだ可能性があるからね。漆は樹液という、いわば ”樹の血液” を使った、日本の究極の塗装文化。ぜひ漆の持つ、力強さを感じていただきたいね。

小林さんの作品

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