失われゆく木曽の職人たちの想いを、後につなぐこと、それが使命。
大河内家具工房
大河内 淳
OHKOHCHI Atsushi
MADE IN KISO のモノづくり。
木地作りから漆塗りまで一貫生産しています。伝統が息づく私たちのプロダクトを是非手に取ってみてください。
地元を離れ、塗装のルーツを辿って木曽平沢へ。
生まれは愛知だと伺っています。どのような経緯で木曽平沢へきて、会社を起こすに至ったのでしょう?
元々愛知出身で、実家は塗装屋なんです。そこを継ぐつもりでいたんですが、色々勉強しているうちに塗装のルーツは漆だということを知って。塗装の工程というのは漆塗りの工程に全て含まれてるんですよ。そこから上松技専を知って。とはいえ、あそこって木工の学校で。実習の中で椅子とかテーブルとかどんどん出来上がって来るんですよね。それで漆も含めた木工をやっていきたいなっていう。
その後木曽平沢の漆芸学院に入るんですが、その時先生に勧められたのが前職の漆器屋さんの木工部だったんです。ちょうど今私の会社がある場所がその工場で。2011年に、そこから場所を譲り受ける形で、独立しました。
自分たちの技術を発信することを、大事にしていきたい。
そうして2019年にリリースした自社ブランドのNOKO(ノコ)。NOKOの誕生ストーリーについてお伺いしてもいいですか?
独立当時は木地製作の案件受注からスタートしました。多い時には職人さんが10名いたときもありましたが、僕たちが作るのはあくまで「半製品」。どれほどすごい技術を持っていてもそれが日の目に晒されることはほとんどないんです。せっかく入ってこんだけ頑張ってやってるのに、もうちょっと世間に評価されたいな、とかね。なので、職人さんの働くモチベーションという意味でも、まずはブランディングだなと。それで出来上がったのがNOKOです。その中での自分たちの価値っていうのはこういう商品があって、これを作っているのは私なんです、と発信していくこと。そういうことを大事にしていきたい。
「勘と経験」を数値化し、伝統を受け継ぐ。
NOKOでは昔ながらの「挽き曲げ」技法をNCルーターなどの機械によって再現されていますね。商品のこだわりポイントを教えて下さい。
NOKOでは木曽に伝わる「挽き曲げ」を復活させたいと考えていましたが、やはり人力ではどんなにベテランの職人さんでも難しい。でもうちにはそれができるんです。なんでかっていうと数値化したから。よく伝統工芸品の定義などを聞かれるんですけど、伝統工芸というよりも、あくまでものづくりの枠の中でも工業製品を作っているような感覚があって。そういう意味では勘と経験に頼らないというのは僕はすごく大事だと思っています。あと木工って基本的には危ない仕事なんですよね。それを、デジタル化することによって安全率が高くなる。ただね、挽き曲げも曲げていく工程は人がやりますし、全てが機械ってわけではないんですけれど。
NOKOの最初の製品はお弁当箱で、他にもコーヒードリッパーなども出してます。特にコーヒードリッパーは、初期の頃は木や漆の匂いがしやすく、シーズニングして行かなければなりません。そういう意味で「育てるコーヒードリッパー」と名付けています。
木曽漆器は「山の伝統から生まれた暮らしの道具」。
木曽平沢の漆器をこれから手に取る人へ何か、一言頂けますか?
よく「漆器ってどう扱えばいいですか」と聞かれるんですが、「ガラス製品と同じように」っていいます。ガラス食器は普通に洗剤使って、スポンジで洗いますよね。それと一緒に考えてもらって大丈夫です。名刺にもありますが、僕にとって木曽漆器は「山の伝統から生まれた暮らしの道具」なんです。もともとの木曽漆器のルーツってそういうような質実剛健で生活道具ということもあって。これはどんな作り手もみなさんおっしゃることだけども、ハレの日だけに箱から出してきて使うんじゃなくて日常生活の中で漆器を使って欲しいなあと思います。