漆器のこと
LACQUERWARE
唯一無二の
機能性天然塗料「漆」
漆(うるし)の木の樹液を精製してつくられる天然の塗料を、丹念に塗り重ねる技法を「漆塗り」といいます。
漆の木はウルシ科に属する落葉樹で、幹に傷をつけて樹液を採取します。一本の木から、樹液は年間60〜250g程度しか採取できないので、大変貴重です。日本産の漆もありますがほんの僅かで、全国でも現在はアジア産(主に中国産)が主に使用されています。
漆は硬化すると水を通しません。また、硬化した漆は酸やアルカリにも強く、硬さはガラス並みです。左には抗菌作用もあるという、天然の塗料では他にない性質を持っています。
化学塗料のない時代には木材を長持ちさせるために欠かせない塗料でした。現在でも特に神社・仏閣などで、柱や床・天井・仏像など、漆塗りが多く使われているのを見ることができます。また、接着剤としても漆は重用されてきました。
当館の漆展示コーナーでは、漆塗りの材料や工程、道具など詳しく解説しています。ぜひお立ち寄りください。
使い込むほどに
美しい艶
漆塗りの魅力の一つとして、美しい光沢は語らずにはいられません。
漆は時間が経つにつれて透明感が増していき、使うことでどんどん艶が出て深みが出ます。こういった経年変化も、漆器の楽しみの一つです。
中山道から
全国に広まった木曽漆器
木曽漆器は、木曽ひのきをはじめとする木曽の良質な木材で作った木製品を頑丈にするために、漆を塗ったのが木曽漆器の始まりと言われています。室町時代初期(1394年)に、漆器がお寺に納められたという伝承が、最も古い木曽漆器の記録です。
木曽漆器は、江戸、京都、加賀などの大名文化の煌びやかな塗りのものとは違い、中山道の街道文化と豊富な木材から生産された日常用の雑器を主に生産し、木曽檜を材とした檜物細工の塗り物は、木曽物として中山道から全国へ広まり、全国有数の漆器産地となりました。
木曽の宿場町は現在もその形を残している場所が多く、江戸時代の歴史を感じることができます。特に、当館から車で15分のところにある「奈良井宿」は、約1kmにわたって江戸時代の街並みが大切に残されており、当時の旅人の気分を味わえるとっておきのスポットです。ここは、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
また、明治時代に奈良井宿周辺で発見された「錆土」という粘土質の土を下地に使用することで、堅牢な漆器を作ることが可能となりました。質の高い漆器の生産により、木曽漆器はさらに全国へと名を広めたのです。
当館から車で5分の「木曽平沢」は木曽漆器の職人がたくさん暮らす漆工の町です。たくさんの職人の工房や漆器店が軒を連ね、この地ならではの伝統技術を今に繋義、国の重要伝統的建造物群保存地区にも指定されています。ここで職人たちが伝統を紡いだり、新しいものを生み出しています。
漆器のお手入れ Q&A
-
漆器を洗うときはどうすればいいですか?
使用した漆器は、台所用洗剤(研磨剤の入っていないもの)で柔らかいスポンジを使って洗ってください。日常使いの漆器は、難しいお手入れは必要ありません。
洗った後は自然乾燥でも良いですが、柔らかい布でふきあげると長持ちし、ツヤも増すのでおすすめです。
蒔絵などの繊細な装飾が施された漆器の場合は、傷をつけないように気をつけて扱いましょう。 -
浸けおきはできますか?
長時間の浸けおきは避けてください。
傷のある漆器は、傷から水が染み込んで内部の木材を変形させたり、傷を広げることがあるので特に注意が必要です。 -
食洗機や電子レンジの使用はできますか?
食洗機や電子レンジの使用はしないでください。
漆器は、木材に漆塗りを施したものがほとんどです。漆は頑丈な塗料ですが、内部の木材への乾燥やダメージが、破損やひび割れの原因となります。また、電子レンジでの加熱により内側の木材が焦げて燃えることもあります。
※内部の素材が樹脂などの理由で、食洗機対応をしている場合もございます。 -
箱に入れて保管した方がいいですか?
漆器は自然のものです。漆器も呼吸をしていますので、可能であれば風通しのいい乾燥しすぎない場所に保管するのがベストです。長期間箱に入れて保管する場合は、たまに出して外気に触れさせてあげましょう。過度な乾燥は内部の木材の割れの原因になる他、湿度が常に高いような場所もカビの原因となりますので避けてください。
また、漆は紫外線に弱いため、直射日光の当たる場所での保管は避けましょう。